力道山の世界選手権とインターナショナル選手権
力道山DVDの見どころ
前回のDVD「闘魂伝説 アントニオ猪木 若獅子 新時代の咆哮」を見た後、久しぶりに猪木の師匠である力道山のDVDも見たくなった。
実は力道山のご子息である百田兄弟の長男・百田義浩氏は小生の高校大学の先輩でもあり、
かつて高校の時、担当の化学のベテラン教員に氏のことを尋ねたところ「おお、百田か!教えたよ。その時力道山は健在だったけど、さすがに父兄会には来なかったけどね(笑)」との答えも鮮明に記憶している。
時代背景もあり力道山のDVDも限定されている。力道山本人は出演してないが、2004年制作のそのものズバリの題名の映画「力道山」をはじめとして、映画「力道山物語 怒涛の男」、映画「力道山の鋼鉄巨人」、テレビシリーズ「チャンピオン太」(アントニオ猪木が、役名「死神酋長」として、出演していることでマニアには有名。)等、映画・テレビのDVDはあるのだが、肝心の試合映像収録のDVDは映画「ルー・テーズ対力道山 世界選手権争奪戦」と弊社から発売中の「必殺の空手チョップ 今蘇る!力道山 伝説の格闘王」の合計2本のみである。
「必殺の空手チョップ 今蘇る!力道山 伝説の格闘王」は、「ルー・テーズ対力道山 世界選手権争奪戦」の再戦(1957年10月13日のNWA世界ヘビー級選手権)を含む、力道山のシングルマッチのみ以下5試合を収録している。
①インターナショナルヘビー級選手権 力道山(王者)vsザ・デストロイヤー(挑戦者)
②WWA世界ヘビー級選手権 力道山(王者)vsフレッド・ブラッシー(挑戦者)
③NWA世界ヘビー級選手権 力道山(挑戦者)vs ルー・テーズ(王者)
④第一回ワールド大リーグ戦 力道山vs ミスター・アトミック
⑤第一回ワールド大リーグ戦優勝決定戦 力道山vs ジェス・オルテガ
それぞれの見どころを紹介すると。
①インターナショナルヘビー級選手権 力道山vsザ・デストロイヤー
正確にはインターナショナルヘビー選手権だが、この時代は「世界選手権」と混同されており、まず篠原リングアナウンサーが「本日のメインイベント、世界選手権61分3本勝負でございます。」と高らかにコール。続くコミッショナー宣言でも、当時の自民党副総裁・大野伴睦氏によるタイトルマッチ宣言でも「この試合は世界選手権であることを宣言する」と。その後の選手紹介でも「青コーナー、世界選手権保持者・力道山」というように完全に世界選手権扱いだが、途中からテレビアナウンサーが「インターナショナル選手権」と話しており、さらに2本目の途中には「NWAのインターナショナル選手権、世界選手権」と完全に混同している。現在の認識では、インターナショナル選手権と世界選手権は、全く別物であるが、おおらかな時代であまり細かい事にツッコミが入る時代ではなかったようで、その緩い時代の雰囲気も楽しんでいただきたい。
1本目、なんとデストロイヤーのボディスラムで力道山がフォール負け。ただ、デストロイヤーの足はロープにかかっており反則のフォールなのだが、レフェリーの沖識名は見逃してしまう。ここらへんはこの当時日本では完全に悪役だった頃のデストロイヤーの雰囲気がよく出ている。2本目はあっさりと力道山が空手チョップ1発でフォール勝ち。3本目は4の字固めの攻防で両者場外転落、その後場外で不用意にヘッドロックをかけたデストロイヤーを力道山は、バックドロップというよりも「岩石落とし」で、場外のマットではない「畳」に叩きつけてリングアウト勝ち。デストロイヤーは、かなり悔しかったらしくゴングの乱打後も大暴れ。
②WWA世界ヘビー級選手権 力道山vsフレッド・ブラッシー
大野伴睦コミッショナーも「世界選手権」と宣言して、「WWA(世界レスリング協会)世界選手権」とは言わない。この頃も、「世界選手権」は、何種類か存在していたのだがいかにも時代を感じる。正確には「WWA世界ヘビー級選手権」で、当時明確により権威のある「NWA(全米レスリング同盟)世界ヘビー級選手権」も存在したが、当時の一般的認識では、WWAと、NWAの差異はわかっていなかったようである。
1本目の決め技、ブラッシーのオーソドックスな「ネックブリーカードロップ」を是非ご覧頂きたい。
③NWA世界ヘビー級選手権 力道山vsルー・テーズ
力道山としては、これがルー・テーズのNWA世界ヘビー級選手権への通算3度目の挑戦となる。全くリングアナウンサーもテレビアナウンサーも「NWA世界ヘビー級選手権」とは、一言も言わず「世界選手権」で通している。体重の階級にも全く言及しない。ジュニアヘビー級もライトヘビー級も存在はしているのだが、当時は非常に影の薄い存在だったようだ。
3本勝負の1本目、王者ルー・テーズの代名詞ともいえる「バックドロップ」、それも、典型的へそ投げ式バックドロップを出して、教科書通りの手四つ式で力道山から3カウントフォールを奪う。2本目は割とあっさりと力道山がカウンターの水平チョップでテーズからフォールを奪う。
決勝の3本目はご覧になってのお楽しみだが、残念ながら力道山悲願の「NWA世界ヘビー級選手権奪取」とはならなかった。
その夢は17年後に弟子のジャイアント馬場が達成する。
④第一回ワールド大リーグ戦 力道山vsミスター・アトミック
力道山の存命中一時プロレス人気が下火になったことがあったが、プロモーター力道山が起死回生で開催した「ワールド大リーグ戦」が大当たりして、プロレス人気は復活した。
その第一回ワールド大リーグ戦で力道山は反則負け。決勝進出が断たれたかと思われたが、対戦相手の悪役覆面レスラーのミスター・アトミックが大流血、決勝を棄権したため力道山が決勝進出できたという、なんとも前時代的なおはなし。
⑤第一回ワールド大リーグ戦優勝決定戦 力道山vsジェス・オルテガ
その第一回ワールド大リーグ戦決勝は、「メキシコの狂える巨象」ジェス・オルテガ
との試合になったが、レフェリーのダニー・プレチェスの高速カウントで決着。
力道山および日本のプロレス史に興味のある方なら必見の歴史的DVDといえるのではないだろうか。
ふじやま