これ描いて死ね
TVアニメ『これ描いて死ね』放送記念!!とよ田みのる先生 × 赤城博昭監督スペシャルインタビュー
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TVアニメ『これ描いて死ね』が日本テレビ系全国30局ネット「フラアニ」枠で2026年7月より毎週金曜日23:30~に放送される。アニメ化の決定以来、キャスト発表等を通して常に話題となっており、放送を待ちわびるファンは多い。自身の作品にとって初のアニメ化となる原作者のとよ田みのる先生、アニメーション制作を手掛ける赤城博昭監督に、『これ描いて死ね』アニメ化を巡るエピソードや作品への思いを語っていただいた。

━━ とよ田先生は、『これ描いて死ね』のアニメ化解禁時に、Xにて「夢じゃねえよな!」と喜びをポストされていましたが、アニメ化が決まった際のお気持ちをお聞かせください。

とよ田:連載をいくつか続けるなかで、これまでも「アニメ化しませんか?」というお声はいただいておりました。今回、本当にアニメになるぞっていう話が盛り上がってきて、「本当に?」ってだんだんなんか怖くなってきました(笑)。だから未だにまだ実感もないぐらいで、本当に夢のような感じです。

━━ 赤城監督は、原作漫画にどのような印象を持っていましたか。

赤城:やっぱり僕も描き手なので、描き手の気持ちがすごく伝わってきました。僕は漫画家にすごくなりたいなと今でも思っているのですが、『これ描いて死ね』は目指しているものをすごく素敵に描かれている作品で、その作品のアニメを僕が作れるということで、本当にうれしさでいっぱいでした。

━━ 先ほどお話に出た、とよ田先生の「夢じゃねえよな!」というXのポストをご覧になっていかがでしたか?

赤城:いや、夢じゃないよ!っていう(笑)。もうこっちは頑張ってますよ、みたいな感じでしたね。

とよ田:ちなみに、その「夢じゃねえよな!」は近藤信輔先生の『忍者と極道』っていう漫画の中のセリフ(「幻想(ユメ)じゃねえよな」)です。

━━ 初回の打ち合わせで、とよ田先生はアニメ化にあたり「島の美しさを一番に考えてほしい」とお話しされていたそうですね。ご出身地である伊豆大島をモデルにした舞台設定への思いをお聞かせください。

とよ田:僕にとって大島は、父が教員でいろんな土地を転々としていた中で、ある時期だけ暮らしていた場所です。生まれてから3歳までしか島にいませんでしたが、引っ越した後も、家は残したままにしていて、子供の頃は夏休みとか冬休みに、遊びに行くという生活をしていたんです。だから、大島は、僕にとっては休みのときに遊びに行く楽しい場所であり、少年時代の楽しい思い出がギュっと詰まったような場所なんですよ。そういう、美しくて楽しかった場所を漫画でも再現したいなと思って描きました。

━━ ご自身の記憶の中にある風景を描いているということですね。

とよ田:そうですね。大人になってから取材のために改めて行っても、それはあまり変わらないんですよ。「あの時のまんまだな」っていう場所が多くて、うれしいですね。

━━ アニメでは、島の風景はもちろん、校舎の窓から差し込む光など、とても美しい映像が印象に残りました。赤城監督は島の美しさをどのように作品に反映しようと考えられたのでしょうか?

赤城:先生はキャラクターのことを伝えてくるのかなと思っていたので、まさか開口一番、「まず島の美しさを一番に描いてほしい」とおっしゃるとは思っていなかったです。その意向を聞いて、制作チームでロケに向かったのですが、港の風景が情緒的で、すごく作家に合うなと。文豪もあのあたりで何かを描いていたっていう想像も掻き立てられるような部分もあったし、島の独特な文化みたいなのもあったのでロケに行った作画陣や美術陣も「こういう素敵なところを綺麗に描けたらな」という思いで取り組みました。

とよ田:「本当にここまでやってくれるんだ」という感じで、想像以上に美しくてびっくりしました。

赤城:ただの風景を映しただけじゃなくて、原作の色味もある程度インプットしようと考えていたので、普通の色からちょっと色々彩度を上げているんです。

とよ田:へえ~!

赤城:影の色も単純な黒じゃなくて、ちょっと色を入れて、明るい世界を描こうかなと。だから実際よりもさらに先生の原作ならではの色使いもインプットしています。

とよ田:改めてチェックしてみます(笑)。

━━ 多くの原作ファンがいる作品ですが、アニメで初めて知る方は、『これ描いて死ね』というタイトルを見て驚かれるかもしれません。どのような思いを込められているのでしょうか。

とよ田:僕は今回、いつもの作品よりもたくさんの人に楽しんで、喜んでもらえるような、広く愛される作品にしたいと思っていました。だから「我を殺して」じゃないけれども、いつもよりは自分をセーブした優しい世界を描こうとしたんです。ただ、そこで我慢した分タイトルには我がちょっと出ちゃったんですね。なので、ちょっと後悔してます(笑)。強くなりすぎちゃったなと思って。

赤城:ははははは(笑)。

とよ田:ちょっと無理して優しくしすぎたので、どこかでバランスを取りたかったのかもしれないですね。タイトルを刺さるようにした感じです。

赤城:タイトルについては、別に僕は驚かなくて、『これ描いて死ね』っていうのはすごくわかるなって。描き手としては、本当に何かを残したいという思いはすごく強いですから。『これ描いて死ね』っていう気持ちは僕にもわかるっていう、そういうタイトルだと思っています。

━━ 原作漫画が多くの方に支持されている理由は、どこにあるとお考えでしょうか?

赤城:やはり共感性が強いところですかね。作り手や夢へ向かっている人に、“あの”キャラクターを含めてそういうところが刺さっている部分ではないかと思います。

━━ 声優キャストについてお聞かせください。赤城監督は安海相役の関根明良さん、手島零役の早見沙織さんをはじめとするキャストのみなさんとはどのようなお話をされましたか。

赤城:みなさん本当に原作愛が強くて、アニメーションでもそんなに逸脱するような部分はないので、キャラクターの思いも、それぞれがしっかり感じ取って演じてくださったと思っています。なので、こちらから特別言ったことはなかったです。みなさん本当にお上手な方で、安心していられました。

とよ田:キャラクターにしっかりハマっていましたよね。最初に、「声優さんは誰を起用したいですか?」のような相談を受けたことがあって、その際に僕が一番好きな声優さんとして、「早見沙織さんが好きなんですよ」って言ったら、「声を掛けようと思っていました」と言われて(笑)。

赤城:(笑)。

とよ田:そこが繋がったのがすごくうれしくて、まさかまさかと思いました。

赤城:原作を読んでいるときから、ある程度イメージがあって、「手島先生は早見さんがいいな」と、早見さんの声で再生していたんです。そんな中でちょうど早見さんのお名前を挙げて頂いたので、じゃあ良かったっていう。

赤城:早見さんの声がまたちょっといつもと違う感じじゃないですか?厳しめの声になっているっていうのもなんか新鮮でしたね。

━━ ポコ太の声を日髙のり子さんが演じているというのも驚きました。

とよ田:あれも本当にすごいですよね。びっくりしました。アフレコでお会いしたときに、「今度、あだち充先生に自慢してきます」って言ったら、爆笑されていましたけど(笑)。「驚いちゃうわよ、あだち先生」って。

━━ やはり『タッチ』のイメージにつながりますよね

とよ田:そうですね、やっぱり青春時代に一番グッときた作品ですからね。

赤城:僕としては『タッチ』よりも、『ふしぎの海のナディア』(ジャン・ロック・ラルティーグ役)や、『ピーターパンの冒険』(ピーターパン役)とか、むしろ少年役の声の印象が強くて。そのこともあって、ポコ太のちょっと包み込むような声質には、日髙さんが合うかなっていう。

とよ田:そうですね、優しい存在ですからね。人を癒すために存在していますから。

━━ 今作の登場人物たちのように夢に向かって生きていく中では、楽しい反面、挫折することもあります。お2人の中で、夢に向かっていくときにこれまで大切にしてきたこと、今も大事にしていることがあれば教えてください。

とよ田:作品のテーマでもあるのですが、やっぱり何か結果を求める前に、目の前のものを好きでいることが大事なんじゃないかなと思うんですね。何か結果を求めると、そこに到達できなかったときに、がっかりしたり挫折したりすると思うのですが、目の前のことを好きで続けているだけだったら、それはずっと続けられることだから、自分の心のためにもいいことだし、それが一番ではないかなと思っています。そういうことが漫画でも伝えられたらいいなと思っています。

赤城:とよ田先生と同じで、本当に好きでいるっていうことが一番ですよね。それが好きじゃなくなった途端に遠ざかっていくので、ずっと好きでいるってことだと思います。たぶん、好きじゃなかったら続けられないですね、この仕事は。

とよ田:そうですよね。例えば「漫画家になること」を目的にしちゃうと、やっぱりどこかで疲れちゃうと思います。なったときに達成したらもうその先はなくなっちゃうし。だから本当に「ただ 1つの美しい作品を作る」っていう気持ちだけでやっていたら、ここに来ちゃったみたいな感じがあるかもしれないです。「結果よりも好き」ってことですかね。

━━ 最後に、アニメをご覧になるみなさんへ、改めて作品の魅力や見どころを教えてください。

とよ田:なにかを好きでいることの大切さと、あとは島の美しさですね。「大島はいいところだな」みたいな。みなさんもその自然の美しさを楽しんでいただけたらと思います。

赤城:本当に個々のキャラクターがすごく魅力的で、どれも愛されるキャラだと思いますので、もちろん原作の魅力も十分に生かしつつ、僕としては本当にこれから何世代の人に、より多く観てもらいたいです。

取材・文:岡本貴之
写真:中田智章