2024.08.26
第2クールの放送が開始し、ますます絶好調のTVアニメ『ザ・ファブル』。“小島編”の余韻も冷めやらぬ中、新シリーズ“宇津帆編”ではこれまで描かれなかったアキラの過去も描かれる。そんな“宇津帆編”から新たに登場し、物語のカギを握る車椅子の少女・ヒナコを演じる安済知佳と、我らがファブル兄さん・興津和幸の対談が実現!
クールな二人が、熱く語り合う──。
興津 僕だけではなく周りの人たちも「あっ、佐羽ヒナコだ」と自然に受け入れていた気がします──。
安済 アキラがきっかけになって、ヒナコの物語が動き出していったのだと思います──。
内に秘めているものを感じ取る楽しさが作品の醍醐味
──大好評だった1クール目に続き、第2クールがスタートしました。安済さんは佐羽ヒナコ役として第2クールからのご出演になりますが、アフレコ初日はどんな想いを持ってスタジオに入られたのですか?
安済 錚々たるメンバーが揃っている現場ですし、私は17話からの参加ということで、とにかく迷惑だけはかけないようにと思いながらスタジオ入りしました。
興津 えっ、そんなことを思っていたんですか。こちらとしては、もうウェルカム状態だったんですけど。何しろ、17話までいたキャラクターが、ほとんどいなくなりましたからね(笑)。
安済 でも、メインキャストの皆さんは一緒じゃないですか。オクトパスの社長とか。
興津 そう、陽気なおじさんたちは残ってる。
安済 ドキドキしながらスタジオ入りしましたね。すでに4話ぐらいまで放送されていたので、一気に見たんですが、「あれっ、ちょっと待って。セリフが関西弁だ」と一瞬焦ったんです。でも、ヒナコは東京の子だから関西弁じゃない、と少し安堵した記憶があります。
興津 ドキドキしながら現場に来られたと言っていましたが、スーッと周りに溶け込んでいましたよ。僕だけではなく周りの人たちも「あっ、佐羽ヒナコだ」と自然に受け入れていた気がします。これは『ザ・ファブル』全体に言えると思うんですけれど、黙っているからこそ感じるものがあると言うか。内に秘めているものを感じ取ることが楽しい作品だと思うんです。語りすぎないからこそ良い。そこが面白い。あれっ、安済さんの話からズレちゃいましたね(笑)。
──いえいえ、『ザ・ファブル』の魅力を伝えていただいてありがとうございます。ところで安済さんは、ヒナコ役の出演オファーを受ける前から原作の『ザ・ファブル』という作品はご存じだったのですか?
安済 今回の出演はオーディションで決まったんです。人気作品ですし、実写で映画化された時もすごいニュースになったり、周りも話題にしていたので認識はしていましたが、作品の中身を深く知ったのはオーディションがきっかけだったんです。良い意味で「思っていたのと違う」という印象を受けました。
興津 どう違っていたのか気になりますね。
安済 テレビCMで実写映画の予告編を見たときに、ちょっとコメディ寄りの作品なのかなと勝手に思い込んでいました。オーディションの資料に演じるシーンのセリフと抜粋された原作のコマがついていたんですけれど、思っていたよりもシンプルでシックな絵に感じて。想像していた空気感とは違うなというのが最初の印象でした。その後、原作を読ませていただいたのですが、すごいバランスが良いと言うか。シリアスな中にギャグの要素もあって、最初は「笑っていいのかな? これは笑うのが正しいのだろうか?」と。読めば読むほど楽しみ方が自分の中で確立していくような、面白さと不思議な感覚を味わいました。
ヒナコの心に、諦めていない意思を感じて演じた
──ヒナコは過去の出来事から希望を失い、人形のように生きている人物ですが、安済さんはどのような想いで演じられていますか?
安済 ヒナコは「人形のような」と形容されていますが、私の中では「そうなの?」と思ってしまうほど、そこまで無気力な人間には感じられなくて…。オーディションで演じたのは、ヒナコが鉄棒を使って立つ練習をするシーンだったんです。それが私とヒナコとの初めての出会い。ヒナコの諦めていない気持ちがわかったうえで原作を読んだので、無気力なイメージを抱くことはありませんでした。むしろ、彼女の諦めない姿勢を尊重するように、何を原動力にしているのか、何が目的で立てるようになろうとしているのか。生きることを諦めているなら、立つ練習をしないと思うんです。そこは結構考えながら演じていましたね。
──周りからは人形のように見えるかもしれないけれども、安済さんが想うヒナコは心の内に熱い何かを秘めた人物であると?
安済 そうですね。少しずつでも未来への光を、どうにかして掴もうともがいていたところにアキラが現れて。起爆剤じゃないですけれど、アキラがきっかけになって、ヒナコの物語が動き出していったのだと思います。
──興津さんはアキラ役として、ヒナコの存在をどのように感じて演じられていますか?
興津 僕だったらヒナコに対して「ごめんなさい」という気持ちを感じるけれど、アキラは少し違う感覚でヒナコと接しているのだろうなと思っていて。誰かに迷惑をかけたら、ごめんなさいと思うのは「普通」のこと。困っている人がいたら助けるのも「普通」のことだとは学んでいるけれど、アキラは「普通とは何だ?」と常に考えている状態なので。困っている人を助けようという気持ちが心の中で生まれたのかといえば、それはまた別の話だと思うんです。ヒナコに対して何かを感じて動いているけれど、その本意は自分でもわからない。言葉にするのが難しいのですが、たぶんアキラって「わからない」をずっと続けているからこそアキラなんじゃないかと思うんです。
──ヒナコ目線ではなく、安済さんご自身はアキラを、どんな人物だと思われますか?
安済 私が原作やアニメから受けるアキラの印象は、これから感情が育まれていく人間を見ているような感覚なんです。身体は大人で、経歴もトップ・オブ・トップの殺し屋なのに、生まれたばかりの赤ちゃんみたいな面もあって。アキラが描く絵にもそれが表れていると思います。そのギャップが愛おしい。この気持ちは何でしょうね。母性なのかもしれない(笑)。
第2クールでは、アキラの新たな一面が垣間見える!?
──興津さんにお伺いしたいのですが、第1クールの中で特に印象に残っているシーンを教えていただけますか?
興津 いちばん印象的だったのは、カシラが小島との最後の会話で「大丈夫や」って安心させてあげたところが胸に刺さりましたね。大好きな弟分である小島の、この世への恨みをやわらげてあげるというか、認めてあげるというか。カシラとしての懐の深さを感じますけれど、二人ともケジメをつけなきゃいけない世界で生きている。その覚悟や生き様を、大塚(明夫)さんと津田(健次郎)さんが見せてくださったので。生き方は大事だけれど、死に方というのも意味を持つ大事なことなんだと、改めて考えさせてくれたシーンだなと思って、とても印象的でしたね。
──あのシーンにアキラは登場していませんが、アキラがメインとなるシーンで印象に残っているところとは?
興津 う〜ん、良いシーンしかないですからねぇ(笑)。この場面ってことではなく、物を食べるシーンが都度出てきますが、視聴者の方はギャグシーンとして見られていると思うんですね。栄養を考えると、この食べ方が良いはずなのに、それは普通の食べ方ではない。アキラが当たり前に思っていることが当たり前じゃない。普通じゃないわけですよね。そこが面白いわけですが、アキラ自身は毎回、真剣に疑問に感じている。1クールを通して演じている中で、何かを食べるシーンを演じるたびに、アキラが本気で「普通に生きたい」と考えていることを改めて実感しました。
──ありがとうございます。では、現在制作中の第2クールの中で、お二人それぞれが思う見どころ、注目してほしいところを教えていただけますでしょうか?
興津 キャンプのような、山籠りのシーンですかねぇ。
安済 あー!そこ私もすごく楽しみです。原作を読んだ時も、あのエピソードが楽しくて。アニメでも描かれるのかなと気になっていたんです。ヒナコは、そのシーンには出ていないので、お話を聞いただけなんですけど、すごく楽しみにしています。
興津 クロちゃんが可愛いんですよ。クロちゃんと山に籠ったことによって、アキラの性格がちょっと柔らかくなった気がして。
安済 子どもの頃から、ずっと一人でやっていたことを、クロちゃんと一緒にやることで、アキラの中で何かが変わったのですかね。
興津 クロちゃんにはアキラに対する絶対的な尊敬がある。圧倒的な思いは人を動かすんだなって思いました。まあ、作品中では全編ギャグでお届けしてはいるんですけれど。それでも、やっぱり感じる部分はあるなぁと思うんですよ。あと、注目してほしいのはアキラが熊と戦うシーン。これまでの中で、いちばん大きな声を出しました(笑)。
安済 そうなんですか!? アキラのキャラクターがブレてしまう不安はなかったですか?
興津 気持ちで負けたら熊に殺されますから。正面切って熊と戦うつもりで「ゴワーッ!」と雄叫びを上げましたよ。
安済 ハハハッ。アキラって、すごい不思議ですよね。テレビでジャッカルを見ている時は、別人のように爆笑するけれど、それでもキャラクターが成立している。今度は雄叫びまで聞けるんですね。楽しみです。
──では最後にお二人から、読者に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
興津 ついに宇津帆さんが現れます。本当に恐ろしい存在なのですが、宇津帆さんが放つ言葉の裏…いや表なのか。どっちなんだと。読者の皆さんは原作を読んでご存じだと思いますが、改めて藤(真秀)さんの演技、声で宇津帆の言葉を聞くと、また一味違った感覚があると思うので、ぜひ注目していただきたいですね。
安済 藤さんのお芝居が入ることによって「すごいものを見た」感が増すと思いますので、ぜひアニメでも楽しんでいただきたいです。あと、金光(祥浩)さんが演じる井崎(勤)が…。
興津 井崎ね。井崎は良いですよ!
安済 原作を読んでいた時から「調子いいことばっかりだな、この人は」と思っていたんですけど、金光さんのお芝居がまた良いんですよね。いい意味ですごい軽くって!ダークサイドを描いているのに、見ていて気持ち良いと言うか面白くて。それは実際に人が声で演じて、アニメならではの演出が加わることで生まれる魅力だと思うんですね。ぜひ、原作とともにアニメーションもよろしくお願いします。
【CAST】
興津和幸 沢城みゆき 花澤香菜
大塚明夫 津田健次郎 小村哲生
福島潤
石井康嗣 岩崎諒太 三野雄大 髙橋耕次郎 水内清光
大西健晴 朝比奈拓見
一条和矢 梶裕貴
藤真秀 安済知佳 子安武人 金光祥浩
【STAFF】
原作:南 勝久『ザ・ファブル』(講談社「ヤングマガジン」掲載)
監督:髙橋良輔
毎週土曜 24:55〜日本テレビ系にて順次全国放送中!!
ディズニープラスで全話見放題 独占!
その他配信サイトでもレンタル配信中!
※TV放送日時・配信開始日時は予告なく変更になる場合があります。
●取材・文/小林保(都恋堂)
取材写真/村田克己(本誌)
興津和幸ヘアメイク/村松直美
安済知佳ヘアメイク/上田忍(S☆mode)
同スタイリスト/津野真吾(impiger)
衣装協力(安済知佳)/VACANCY、VANNIE U
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