イントロダクション

『かもめ食堂』『めがね』『プール』『マザーウォーター』と、人と場所との関係をシンプルに見つめてきたプロジェクトが次に選んだ舞台は、私たちが日々の暮しを営む街、東京と、そこに生きる自身の姿。小さな出会いから生まれる、ふとしたふれ合いをめぐるこの物語は、二人の監督、三人の脚本家によるアンソロジー。

出演は小林聡美、加瀬亮、そしてプロジェクト初参加の原田知世、映画初出演の黒木華。小林聡美と原田知世の初共演に注目が集まる。

監督は、『マザーウォーター』の松本佳奈と、これまでCMやプロモーションビデオで活躍してきた中村佳代。そして、『めがね』『マザーウォーター』で主題歌を手掛けた大貫妙子が、本作では主題歌と劇中音楽を担当。

日々の風景の中に、そして自分自身の中に、オアシスを探す旅へ出てみませんか。 そこにはきっと、東京の「いま」が見えてきます。

物語

深夜の国道。暗闇の中にあらわれた喪服の女・トウコ(小林聡美)は、走るトラックに向かって駆け出していった。その様子に気づいた男・ナガノ(加瀬亮)はトウコを助ける。女優として仕事をしているトウコは、衣装を着たまま撮影の現場から抜け出してきたのだと話す。やがて二人を乗せた車は夜明けの海岸へたどり着く。

小さな映画館。眠りこんでしまったトウコが目覚めると、そこには懐かしい知り合い、キクチ(原田知世)が立っていた。かつてシナリオライターをしていたキクチは、あるとき唐突にトウコたちの前から消えた。この頃シナリオを書いていた頃のことを思い出すと話すキクチに、トウコは、また書いてみたらと明るく語りかける。

のんびりとした動物園。トウコは、からっぽのツチブタの柵の前に佇む女・ヤスコ(黒木華)に声をかける。美術大学を目指す浪人生だったヤスコは、自分に見切りをつけるため、この動物園にアルバイトの面接を受けに来たという。ヤスコにまっさらな始まりの気配を感じながら、トウコは再び、かろやかに歩き出していった。