出演者だより

小林聡美 こばやしさとみ(トウコ)

 今回は東京が舞台で、アンソロジーのような形式ということもあって、映画の毛色としては今までの作品と違ったものになりそうです。私が演じる役柄は女優らしいんですけれど、どんな女優なのでしょうか? まさか「私は女優よ!」というタイプだったりして……。
 東京はいろいろなバックグラウンドを持った人がおもしろい具合に調和して動いている街。街からすごくエネルギーを感じます。そんな街だからこそ、知らない人同士でいようと思えばどこまでも知らない人同士でいられるかもしれない。でも、ちょっと声をかけるだけであたたかいものが広がることもあるんじゃないでしょうか。ちょっと意識すればいくらでもできることだなって、普通に暮していても感じています。映画を観た方にも「意識してあたたかいところを少しでも作れたら、もっとあったかい毎日が送れるのかな」と思ってもらえればいいですね。
 私のオアシスは自分が運転する車の中ですね。ひとりになれる場所だから。そういうところで心が静かになったり、楽しい気持ちになれると人にも優しく接することができるようになるから。心を休める準備の場所というか、自分を整える場所がオアシスですね。

加瀬亮 かせりょう(ナガノ)

 今回は脚本を読んだ印象が今までと違いました。いつもよりセリフが多いからでしょうか。今までは会話ではないところで人と人のつながりを表現する作品が多かったので、どんな作品になっていくのか探っていきたいと思っています。
 難しいのが、いつものように明確なわかりやすい物語があるわけではないなかで、『東京オアシス』というタイトルがついているところ。「『東京オアシス』って何だろう?」と、自分のなかでずっとイメージがふわふわ浮かんでいて、多分演じるときもそれが何なのかを探りながら演じることになるんじゃないかな。できあがった作品からなんとなくその"何か"が浮かび上がったらいいなと思っています。
 僕が演じるナガノの車の中に、(小林)聡美さんが演じるトウコがいきなり乗ってくる。聡美さんのオアシスは「車の中」って言っていたのに、人のオアシスは壊すんですね(笑)。僕にとってのオアシスは場所ではなくて、誰といるかにかかっています。だから自宅か友達の家にしかいないんでしょうね。
 もともとシンプルな映画を作るチームですが、これまでの経験から自分の中で今まで以上に余計だったものが揺り落とされたような気がして、そういう自分のままこの映画の中に立ちたいと思っています。

黒木華 くろきはる(ヤスコ)

 ヤスコの年齢や芸大を目指しているところなどは私と近いので、そこからヤスコに近づいていきたいです。私は大阪の田舎の町出身なので、見知った人とばかり接して過ごしてきました。だから、この映画のなかのように全く知らない人と会って話をするようなことはあまりありません。タイミングやきっかけがないと、いろいろな人に会うこともないですし……。
 私は去年の12月に東京に出てきたのですが、まず東京には人がたくさんいるんだなあと思いました。自分の想像していた東京の人は冷たいとか、森がないとか、ビルばかりで星が見えないというイメージだったんですが、この数ヶ月暮してみて東京にも公園はあるし、地元と共通する部分もあって自分の想像していた東京とは少し違うなって思い始めています。
 『かもめ食堂』から作品を観ていて、すごく澄んだ空気というか、澄んだ時間が流れている映画だなあと思っていました。このチームに初めて参加して、自分にできる限りのことをしたいと思っています。

原田知世 はらだともよ(キクチ)

 『かもめ食堂』を観たとき、とてもていねいに作られている作品だと思いました。みなさんが自然にそこにいて、心地よい空気が流れている。そして、衣装や美術や食べ物ひとつひとつに愛情を注いで作られているのが伝わってきました。今回、このチームに参加できることをとても嬉しく思っています。
 心のどこかでこうなりたい、こうしたいと思い続けていたら、ある時、ふとしたきっかけで、道が開けてくるのかもしれない。私が演じるキクチはトウコと出会って背中をふっと押してもらう。そのあと二人は二度と会わないかもしれないけれど、あの偶然の出会いが今の自分に繋がっている。 人生を振り返ったとき、キクチはそんな風に感じるのではないかと思います。
 東京にはたくさんの人がいますが、関わりをもつことができる人はほんの一握り。一期一会の中に、心あたたまるできごとや、相手を通して、新たに自分を見つめるきっかけをもらうことがあります。だからこそ、ひとつひとつの出会いを大切にしたいと私は日々思っています。もしかしたら、そういったものがオアシスなのかもしれないですね。
『東京オアシス』。この3つの物語をよく表したタイトルです。
『あ、いま、この映画観たいな』って思いました。