
市川実日子 草村礼子 光石研 山田真歩 田中圭 小林克也
現代は、心の寂しい人の多い時代。
忙しい。喧嘩した。叱られた。放っておかれた。くたびれた。
毎日、たった一人でため息をつくとき、
その気持ちに寄り添う、温かな存在があったなら――
そんな願いが、1本の映画になりました。
「寂しいヒトに、猫、貸します」と呼びかけながら、人と猫の出会いを手伝う主人公、サヨコ。でも、誰にでもレンタルできるわけではありません。"猫を貸すことにふさわしい条件が揃っているか"の審査付き。幼い頃から、猫に好かれていたサヨコは、彼らの気持ちを汲んで、心寂しい人たちと猫を引き合わせていきます。猫を貸し出して回るサヨコと、彼女が出会う人々が繰り広げる物語。
脚本、監督を手がけたのは前作の『トイレット』で第61回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞し、日本映画界で最も注目を集めているひとり、荻上直子。本作は第62回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品され、長編劇映画初監督作品となった『バーバー吉野』(03)や『めがね』(07)に続く同映画祭3度目の出品となります。また、監督自身"言葉に言い表せないくらい"の猫好きとして知られ、大ヒットを記録した『かもめ食堂』(06)他、国内外で評価の高いこれまでの作品群には、いつも、どこかしらに猫の姿がありました。
サヨコに扮するのは、『めがね』で、不器用な島の女性教師を演じ、他にも数々のテレビドラマ、映画、CM、雑誌などで活躍する女優・市川実日子。コケティッシュでキュート、大人の女性になりきる一歩手前の少年っぽさを残した佇まいで、正体不明のレンタネコ屋をコミカルかつスタイリッシュに演じます。
サヨコから猫を借りるのは、年齢も境遇も異なる4人の人々。夫と愛猫に先立たれた老婦人(草村礼子)。単身赴任中の中年男(光石研)。自分の存在意義に疑問を感じるレンタカー屋の受付嬢(山田真歩)。サヨコと浅からぬ因縁を持ち、今はとある組織から追われる男(田中圭)。そして謎の隣人(小林克也)が、絶妙なタイミングでサヨコの前に現れます。
忘れてならないのは、この映画を彩る猫たち。時にはどっしりとした存在感で、ある時には抱きしめたくなる可愛さで、自然に振る舞いつつ、堂々たる演技を披露。歌丸師匠をはじめ登場する数々の猫たちは、誰もが持ち合わせている心の空洞を、いつしか少しずつ埋めていってくれます。そして、猫を貸して回るサヨコ自身も「今年こそは、結婚するぞ」と目標を持ちながら、しっかりと自立して歩んでいきます。
エンディング音楽は、昭和のリズム歌謡としてヒットした「東京ドドンパ娘」をカバー。懐かしいメロディーと、のびやかな歌声がラストを飾ると共に、「くるねこ」のブログ掲載漫画で話題を博した、くるねこ大和が書き下ろしたイラストは、最後まで映画の余韻を楽しませてくれます。
どこか懐かしさが漂う趣のある一軒家、夏の風情を感じる風鈴や風車、子供の声が絶えない河原の土手…etc。リヤカーを引きながらたくさんの猫たちを連れて歩くサヨコの姿は、少し現実離れした光景、でも思わず近づいてみたくなる。そんな魅力を放っています。
「レンタ~ネコ、ネコ、ネコ。寂しい人に、猫、貸します」
都会の片隅でひっそりと営まれる、1軒のレンタネコ屋が、今日もあなたに『レンタネコ』を届けます。
※「東京ドドンパ娘」 1961年にヒットした歌謡曲(歌:渡辺マリ、作詞:宮川哲夫、作曲:鈴木庸一)
※ 動物たちに対しては、彼らの習性や意思を尊重して、映画製作をすすめました。
都会の一隅にある、平屋の日本家屋。そこに、一人の女が住んでいる。名前はサヨコ(市川実日子)。正確には、住んでいるのはサヨコ一人ではない。家中には猫、猫、猫、猫。とにかく、たくさんの猫がいる。サヨコには今のところ、猫のほかに家族はいない。亡き祖母の仏壇を守りつつ、謎の隣人(小林克也)にからかわれながらも、心の寂しい人に猫を貸し出すレンタネコ屋を営んでいる。
「レンタ~ネコ、レンタ~ネコ、ネコ、ネコ。寂しいヒトに、猫、貸します」
サヨコは猫たちをリヤカーに乗せて街へ出かけ、さまざまな人に出会う。

ある日、猫たちを連れ川原を歩いていたサヨコは、上品な老婦人・吉岡さん(草村礼子)に「猫、貸してもらえますか?」と、声をかけられる。吉岡さんは、14歳の茶トラ猫に興味を示す。サヨコは、猫が住みやすい家か審査するため、彼女の暮らすマンションに向かう。彼女は、夫と飼い猫を亡くしてひとり住まい。子どもは、とうに巣立ってしまったという。息子が小さい頃好きだったというゼリーを食べながら、身の上話をする吉岡さん。サヨコは、そんな彼女の姿を見て審査を合格とする。吉岡さんは借用書の期限の欄に"私が他界するまで"と書き記す。うれしそうな吉岡さんのゼリーの真ん中には、スプーンですくった、小さな穴ぼこが空いていた。

数日後、サヨコは、寂しげな中年男・吉田(光石研)の姿を発見する。吉田を猫好きだとにらんだサヨコは、囁くように呼びかける。「レンタ~ネコ、ネコネコ」。寂しい時には猫が一番とサヨコに促され、吉田は審査のため自宅にサヨコを招き入れる。彼は単身赴任中のサラリーマンだった。離れて暮らすうちに一人娘はすっかり年頃になり、父親を避けるようになってしまったとうなだれる吉田の靴下の先には、大きな穴が空いている。彼は審査に合格し、"家族の元に帰るまで"と借用期限に書き込み、一匹の仔猫を借り受ける。その仔猫は、なぜか"臭いもの"が大好きだった。

暑い日にはもっと暑いところへ行くのが一番と考えたサヨコは、レンタカー屋に掲げられた"ハワイ旅行が当たる!"というのぼりにつられて、ふらふらと中に入っていく。そこには、生真面目そうな女性店員・吉川(山田真歩)がいて、AランクからCランクまでの料金設定を、流暢に説明する。ランク付けに対して喰ってかかるサヨコに問い詰められた吉川は、自分はCランクだと漏らす。聞けば、吉川には話し相手がおらず、世界から置いてけぼりをくらったような寂しい毎日を送っているという。サヨコは彼女に一匹の三毛猫を貸すことにする。借用期限は"待ち人現れるまで"。

またある日のこと、サヨコはあまり柄のよくなさそうな若い男とすれ違う。見覚えがあるその男は、サヨコの中学時代の同級生・吉沢(田中圭)だった。子どもの頃から嘘つきで有名だった吉沢を、徹底的に避けるサヨコ。彼は、明日インドに発つから最後の夜は女の子と一緒に過ごしたいと、メス猫を貸してくれるようサヨコにせがむ。きっぱり断って家に帰るサヨコ。しかし、吉沢はサヨコを追って家までやってきた。縁側で彼と話しながら、サヨコは中学時代を思い出す。学校に馴染めない二人は保健室の常連で、お互いを"ジャミコ"、"嘘つきはったりの吉沢"と呼び合っていた。吉沢は縁側で猫とたわむれ、結局、猫を借りずに去っていった。
1978年東京都出身。2000年に公開となった『タイムレスメロディ』で長編映画デビュー。『とらばいゆ』(01)でヨコハマ映画祭最優秀新人賞、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。『blue』(03)では、モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞した。主な映画出演作は、『嫌われ松子の一生』(06)、『ユメ十夜』(07)、『めがね』(07)、『マザーウォーター』(10)。TVドラマ作品に、「すいか」(03)、「喰いタン」(06)、「篤姫」(08)など。「階段のうたseason6」(TBS)、「恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方~」(TBS)に、現在出演中。
1940年東京都出身。劇団「炎座」を経て、劇団「東京小劇場」で活動。1996年公開の映画『Shall weダンス?』でダンス教師たま子先生役を演じ、日本アカデミー賞助演女優賞など7つの映画賞を受賞。主な映画出演作は、『たそがれ清兵衛』(02)、『スープオペラ』(10)、『五日市物語』(11)、『HOME 愛しの座敷わらし』(12・公開予定)。
1961年福岡県出身。1978年、映画『博多っ子純情』の主役に抜擢され俳優デビュー。以降、映画、TVドラマ、舞台等で幅広く活躍。映画出演は150作品を超える。荻上直子監督作では『めがね』(07)、TVドラマ「2クール」、「つくし図書館」(第7話目)に続いて本作は3作目の出演となる。『LOVE まさお君が行く!』(12・公開予定)
1981年東京都出身。出版社勤務を経て、2009年公開の『人の善意を骨の髄まで吸いつくす女』で映画デビュー。主演を演じた『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)で話題を呼ぶ。イラストや4コマ漫画の執筆などでも活躍。主な映画出演は、『モテキ』(11)、待機作に、『アフロ田中』(12・公開予定)『愛と誠(12・公開予定)など。
1984年東京都出身。2003年、TVドラマ「WATER BOYS」で主人公の親友役で注目を集め、数々の映画やTVドラマで活躍。主な映画出演作は、『凍える鏡』(09・主演)、『しあわせのかおり』(08)、『TAJOMARU』(09)、『ラブコメ』(10)、『ランウェイ☆ビート』(11)、『ドットハック』(12・声の出演)、『アフロ田中』(12・公開予定)。
1941年広島県出身。小学生の頃からラジオの英語放送を聞き、独学で英語力を身に付け、大学在学中よりガイドや司会業を始める。1970年代後半に始めた音楽ラジオ番組「スネイクマンショー」は、斬新なスタイルが話題を呼びブームを起こした。ラジオDJとして活躍するほか、俳優やナレーションなども手掛ける日本を代表するエンターテイナー。
1972年、千葉県出身。千葉大学工業学部卒業。1994年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で学ぶ。2000年帰国。第23回ぴあフィルムフェスティバル/PFFアワード'01で音楽賞を受賞。デビュー作『バーバー吉野』(03)でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞を受賞。『かもめ食堂』(06)の大ヒットにより、日本映画の新しいジャンルを築く。『めがね』(07)は、海外の映画祭でも注目を集め、2008年サンダンス映画祭、香港映画祭、サンフランシスコ映画祭などに出品され、ベルリン映画祭では、ザルツゲーバー賞を受賞した。前作『トイレット』では、第61回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。
1970年千葉県生まれ。柴崎幸三氏に師事。荻上直子監督作『恋は五・七・五!』をはじめ、『ALWAYS続・三丁目の夕日』『K-20 怪人二十面相・伝』『BALLAD 名もなき恋のうた』『SPACE BATTLESHIPヤマト』『太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男』などに参加。
1976年宮城県生まれ。中須岳士氏に師事し、故・市川準監督作『東京マリーゴールド』『トニー滝谷』『あしたの私のつくり方』のほか、近作では『こちら葛飾区亀有公園前派出所THE MOVIE〜勝どき橋を封鎖せよ!』『はやぶさ/HAYABUSA』などで照明助手を務め、映画照明技師としては本作が初となる。
1969年東京都生まれ。ソフトバンクの"白戸家シリーズ"やカネボウの"KATE"など、数々のCMにミキサーとして参加。劇場用映画は、2011年公開の『ミツコ感覚』に続き本作が2作目となる。
1964年大阪府生まれ。CMを多数手がけ、映画には1992年公開の『夢二』に助手で参加。『落下する夕方』以降、美術監督として活動している。『ロスト・イン・トランスレーション』では全米美術監督家協会から美術賞にノミネート。その他、『好きだ、』『鈍獣』『パーマネント野ばら』荻上直子監督作『めがね』に参加。
東京藝術大学作曲科卒業。在学中から仏・パリで即興演奏の研鑽を積む。現在は武蔵野音楽大学附属高等学校音楽科で教鞭をとりつつ、医療法人社団研精会稲城台病院で音楽療法のプログラム作成を行う。2008年からパスコのCM「超熟」シリーズの音楽制作に携わり、映画音楽は本作が初となる。
愛知県出身。1993年、名古屋造形短期大学卒業後、デザイン会社に就職。パッケージ・デザイナーの道を歩み、のち独立。2006 年、拾った子猫たちの里親探しのためにブログを開設。広く共感を呼び、2008年1月、ブログ掲載マンガを収録した「くるねこ」(エンターブレイン)を出版、シリーズ累計100万部を超えるベストセラーに。3月に「くるねこ9」、今春に、くるねこファンブック「くるねこ丼3」(共にエンターブレイン)が発売予定。
自分自身、寂しいときに猫が傍にいてくれて救われたことが何度もあったので、猫を貸してくれる人がいたらいいのにと思ったことがありました。あと、ホームレスのおじさんが河原で猫と気持ち良さそうに過ごしている姿をたびたび見かけ、そんな風景と猫を貸すということを結びつけたことがきっかけにもなりました。
初めて猫を飼ったのは20代、アメリカにいた時です。日本に帰国する友人からもらった猫が最初。その後も一人暮らしが長かったので、猫の存在はありがたかったです。今も3匹飼っています。全部"Cクラス"です。猫の描き方についても、決して猫を"守っている"ふうではなくて、同じ目線で生活している演出を心がけました。私自身がそうだからかもしれません。猫は、トイレやご飯などの世話はしなくちゃいけないけど、基本、勝手に生きている。年中構ってやらなくてもいいし、構ってほしいときは無視される。そこが猫好きな理由でもあります。
サヨコは一人暮らしをしていますが、でも、内にこもって暗くなるということではなくて、心はちゃんと外に向いている。猫がいるから大丈夫なのです。
主演の市川さんは30代になり、これからさらに素敵な大人の女優になっていくと思います。そんな彼女が持っている少年っぽさを出せる、最後のタイミングだったんじゃないかと思っています。あと、意識はしていなかったのですが、初号試写の席で知人に「実日子ちゃんがオギガミになってる」と言われました。言われてみると、確かに20代、30代前半の私っぽいかもしれません。
それぞれ、すっと出てきました。とくにおばあさん。年をとって「この子が死んだらもう猫は飼えない」という話は、周囲でもよく聞いていたので。光石さん演じる"吉田さん"がレンタルした臭いものが好きな猫は、私が以前、飼っていた猫がモデルです。レンタカー屋のアイデアは、「レンタカー(Rent-a-car)」と「レンタネコ(Rent-a-cat)」が1文字違いなのに気づいて。サヨコが最後に出会うのは、同年代の青年を出し、幼い頃から保健室登校をしていた、社会になじめない女の子にも、ちょっと恋愛っぽいことがあってもいいのかなと考えたものです。結局、そうはならなかったですけどね。
とてもいいですよね。以前「R60 スネークマンショー」で女装をしていた姿を観て、かわいいなぁと思ってお願いしたんです。パンチのあるヘンなおばさん、というのは最初からイメージにあったんですが、撮影前に小林さんがたくさんアイデアをくださって、小林さん自身の優しさが画面に出て、ただのヘンな人でない、すごくいい感じになりました。
ルックスでなく性格重視。私にも特に好みはなく、猫は皆かわいい。今回、何匹も現場で活躍してくれましたが、結論としては「自分の飼っている猫がいちばんかわいい」。親バカですが。
私は猫に癒されたり、猫から与えられたものが多かったので、この映画にはそのお裾分けという気分もあります。そして、単なるかわいい話ではなくて、人間のドラマを描いたつもりです。猫に興味がないからというだけで映画をご覧いただけないのは、もったいないのでぜひドラマに注目してご覧いただけると幸いです。
脚本・監督 荻上直子
1972年、千葉県出身。1994年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で学ぶ。デビュー作『バーバー吉野』(03)でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞を受賞。『かもめ食堂』(06)の大ヒットにより日本映画の新ジャンルを築く。『めがね』(07)は海外の映画祭でも注目され、サンダンス映画祭、香港映画祭、サンフランシスコ映画祭などに出品され、ベルリン映画祭ではザルツゲーバー賞を受賞。前作『トイレット』では、第61回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。本作『レンタネコ』は、第62回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品された。
※次の当てはまる項目にチェックしてください。
□ あなたの身近に"穴"があいているものがある。
□ 一人暮らしだ。もしくは単身赴任をしている。
□ 自分をランク付けすると、Cランクだと思う。
□ レンタカーを借りたことがある。
□ おばあちゃんとの思い出を大事にしている。
□ 暑い日には、やっぱりビールだと思う。
□ ドーナッツが好きでついたくさん買ってしまう。
□ ネコが好きだ。もしくは猫が好きでなくても猫が寄ってくる。
□ 今年こそ結婚したいと思っている。
□ ここだけの話、実はある人から追われている。
『レンタネコ』度:50%
『レンタネコ』のススメ:
あなたには、子猫のマミコちゃんがお勧めです。

『レンタネコ』度:70%
『レンタネコ』のススメ:
幸運を呼ぶ招き猫が、強い味方になってくれるはず。

『レンタネコ』度:100%
『レンタネコ』のススメ:
どっしり構えた師匠とじっくり話をしてみてはいかが。
