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華々しい栄光の陰にはあまりにも過酷な日常があります。サイクルロードレースは一説によるともっとも長時間のトレーニングを要求されるスポーツ種目であるといいます。目標のトレーニングレベルを達成するためならそれこそ雨でも雪でも自転車にまたがるのです。
わずかな楽しみである食事でも無慈悲なまでの節制を要求されます。よけいな体重は山岳での走りを妨げるおもりにすぎません。体脂肪率でいうと3〜5%(!)、皮膚の下に血管が浮き出してくるまでのダイエットが要求されます。食事のメニューはきわめて貧弱になり、たとえばイタリア人に欠かせないパスタだと、カルボナーラのような脂ののったメニューはNG、塩ゆでのパスタにチーズをおろしてふりかけただけ(!)の食べ方が原則、チームによっては軽めのトマトソースのみかろうじてOK、といった有様です。
さらに選手たちは各地で行われるレースを転戦しなければならないので、家族との団らんも奪われているのです。年間なんと300日も自宅に帰ることができない選手もいるといいます。
過酷な日常に体調を崩したとしてもシーズン中であれば簡単に治療薬を使うこともできません。一般の処方にはカフェインなど厳格なドーピング規則に反する成分が含まれているので、選手が使うことは規則上許されないのです。
こうした過酷な日々に耐える選手たちをさして「プリズナー・オブ・ロード=路上の囚人」という言い回しまであるのです。
さらに加えて、下積みの選手たちであればレース本番でも自由に走ることさえ許されません。近代ロードレースはチームの主力選手(エース)とそれを助ける下積み選手(アシスト)のチームプレーで闘われているので、たとえばエースがパンクしたらアシストは直ちに自分の車輪を差し出してエースを助ける、そういう献身が要求されるのです。本場の熱心なファンたちはこうしたアシスト達の働きもきちんと認めて賞賛するのですが、やはりそれはレースでの勝利には及びません。アシスト達が自分で勝利をねらえるような地位に昇るためにはこうした下積みの仕事をすべてこなしつつ自らも成績を上げるという気の遠くなるような難行に打ち克たなければならないのです。
[TEXT/青山 宏康]