アニメ はじめの一歩 New Challenger:各話あらすじ

|〜第10話|〜第20話〜第26話

Round 1「新たなる一歩」

Round 1「新たなる一歩」

日本フェザー級のチャンピオンとして初防衛にも成功した幕之内一歩。“世界”前哨戦を控えた鷹村守や、実力を着実に上げている青木や木村と共に、一歩は、今やジムの看板ボクサーのひとりになっていた。だが、会長の鴨川は、少しも手綱をゆるめない。トレーナーの八木や篠田に、鴨川は、一歩らをさらに鍛えるよう指示を出した。
そんな中、木村が、東洋太平洋(OPBF)フェザー級タイトルマッチが近い一歩のライバル・宮田のスパーリングの相手をすることになった。東日本トーナメントで敗れて以来、日本を離れて韓国やタイで武者修行をしていた宮田。しかし、スパーリングでは、試合まであと1週間というのに、木村の強打を受け、宮田は3度もダウンを喫してしまった。
宮田に自信を付けさせたかった、とボヤく木村に対し、宮田の父は、息子が十分本気だったと答える。宮田の海外遠征での成績は、11戦で10勝1分け8KOの好成績。だが、骨格がフェザー級以上に成長した宮田は、フェザー級の身体を作らなければならない厳しい困難に直面していたのだ。
宮田の父は、実力を出し切れるライト級への移行を何度も勧めたと明かす。一歩との再戦を夢見る宮田は、その言葉を頑として受け入れなかったらしい。宮田は、父親の話を認めつつも、ワニのアゴ並みに強烈な左右のフックが自慢の王者・アーニーを集中力と精神力で倒す、と告げた。
その頃、アーニーのスパーリングを公開したマネージャーのサカグチは、宮田を“ブラッディ・クロス(血の十字架)”と名付けた必殺パンチで倒す、と記者たちに宣言していた。この話を伝え聞いた青木は、それが血の雨が降るほど強烈なクロスカウンターだと推理するが―。

Round 2「Bloody cross―血の十字架―」

Round 2「Bloody cross―血の十字架―」

OPBF東洋太平洋フェザー級タイトルマッチは、一歩や鷹村、そして、多くの女性ファンが見守る中で、開始のゴングが鳴った。王者・アーニーは、いきなり左の連打と右ストレートで挑戦者の宮田をロープ際に追い詰める。1ラウンドを様子見で行くつもりの宮田は、これをスウェーとスピードでかわし、逆に右ストレートで反撃する。
軽やかな宮田の予想外の強さを認識したアーニーは、ファイタースタイルからボクサースタイルに作戦を変更。左のジャブを中心に、宮田への攻撃を強めた。これを見た宮田は、アーニーの左にカウンターで反撃。まもなく、強烈なクロスカウンターを合わせた宮田は、アーニーからカウント7のダウンを奪った。
第1ラウンドを、ゴングで救われたアーニー。だが、セコンドのサワグチと言葉を交わしたアーニーは、「エサをまいた」と全く慌てていなかった。今度、宮田がエサをひろいに来た時、血の十字架が襲う、というアーニーには、ニヤリと笑う余裕さえあった。
第2ラウンド。一歩は、宮田が最後はカウンターで決めると思った。当の宮田も、カウンターを放つタイミングをうかがう。そして、アーニーの左が出るのを見た宮田は、芸術的とも思えるクロスカウンターをかぶせた。だが、その直後、ダウンしたのは、アーニーではなく、宮田の方だった。悠然と見下ろすアーニーを視界の中に確認しながら、なにが起きたのか分からない宮田。客席の一歩や木村らも、その理由が分からない。だが、鷹村と宮田の父親だけは、アーニーの“血の十字架”の意味に気付いた。
カウント6で立ち上がった宮田は、アーニーの左を見て、再びクロスカウンターを放った。そして、ついに“血の十字架”の秘密に気付くが、宮田は再びダウンを喫して―。

Round 3「約束の場所へ」

Round 3「約束の場所へ」

アーニーに決め手のカウンターを封じられ、第2ラウンド、2度目のダウンを喫した宮田。残り20秒で立ち上がった宮田は、KOを狙うアーニーの連打を受けるが、ガードをしながら打ち返す。残り1秒でダウンした宮田は、スリップと判定され、何とか命拾いした。
自慢のスピードが消えた宮田は、アーニーのカウンター封じが完璧に近かったことから、打つ手がなくなった。だが、セコンドの父親に励まされた宮田は、最後の最後まであきらめない“生きた拳”で奇跡を起こそうとゴングを待つ。
第3ラウンド。宮田は、まずワンツーとジャブでアーニーの出鼻をくじいた。これを見たアーニーは、宮田がケタ外れの精神力でダメージを抑えていると見て、ボディーを狙う。アーニーの強烈な右フックは、カウンターを躊躇した宮田の腹に突き刺さった。誰もがKOを予想したが、宮田は懸命に踏ん張る。一歩との約束を守るためにも、宮田はここで倒れるわけにはいかないのだ。アーニーは、畳み掛けるように左を放つが、ここで第3ラウンド終了のゴングが鳴った。
次のラウンドで試合が終わると察した宮田は、普通は必ず吐き出す口に含んだ水を飲み込む。この一口の水で、ガス欠の身体にカウンター1発分の気合を補給した宮田は、第4ラウンドのリングに立った。アーニーは、連打で宮田を攻めた。宮田は懸命にガードするが、そのガードの上から強烈なパンチを浴びせるアーニー。リバーブローを食らった宮田は、KO寸前。
その直後、アーニーの左を見た宮田は、ブラッディー・クロスを覚悟しながら、最後の気合で渾身のクロスカウンターを放った。

Round 4「世界への胎動」

Round 4「世界への胎動」

東洋OPBF フェザー級タイトルマッチの第2ラウンド。挑戦者の宮田は、チャンピオンのアーニーに全身全霊のクロスカウンターを浴びせ、リングにはわせる。アーニーは、最後の力で立ち上がりかけるが再び崩れ落ち、その瞬間、宮田の新チャンピオンが決定した。割れるような歓声の中、宮田の父はもちろん、客席の一歩、木村らは大興奮。だが、控え室に戻った宮田が思い浮かべたのは、いつか戦うであろう永遠のライバル・一歩のことだった。
ジュニアミドル級の世界戦を控えた鷹村が前哨戦で世界2位を3ラウンドで粉砕する中、一歩に唯一の黒星をつけた伊達の世界挑戦が本決まりとなった。相手は、WBA世界フェザー級チャンピオンのリカルド・マルチネス。話を聞いた一歩は、すぐに伊達に負けた試合のことを思い出した。あの時、一歩は、伊達のえぐるような心臓狙いの強打を受けて棒立ちとなり、TKOで苦杯を喫したのだ。
一歩は、もちろん自分を破った伊達の王座奪取を確信した。だが、リカルドの戦績を見た一歩は、ア然。リカルドは、62戦62勝58KOの無敗の王者。しかも、リカルドは、過去に1度伊達を破ったことがあるのだ。
伊達には、リカルドを避けWBCの世界タイトルを狙う道もあったのだが、あえて一度負けたWBAにこだわったらしい。そして、30歳の伊達にとって、これがラストチャンスの世界挑戦であった。
そんな折、一歩は、リカルド側から、スパーリングパートナーに指名されて―。

Round 5「世界の力」

Round 5「世界の力」

62戦無敗の世界のスーパーチャンプ・リカルドに、一発でもパンチを当てたい一歩。鴨川の激励を受けた一歩は、3ラウンドのスパーで全力を出し切る覚悟で、リングへと向かった。
リカルドは、一歩より背が少し高いだけの選手だった。3番目のスパーリングパートナーとしてリングに立った一歩は、ヘッドギアなしで、ヤル気満々。一歩が伊達を追いつめたことがあると知ったリカルドサイドは、そのヤル気に応えるつもりだった。
リカルドとグローブを合わせた一歩は、すごい威圧感に押し潰されそうになりながら、自分から仕掛けた。だが、フェイントを掛け、頭を振りながら繰り出す一歩のパンチは、全く当たらず、逆にリカルドの鋭い左ジャブを食らう。ガゼルパンチも当たらないまま、ジャブを食らい続けた一歩は、次第にそのダメージが足に来るようになった。
このジャブをよけ切れないと思った一歩は、相手のパンチをブロックし、自分の距離を作ろうと決める。相手の懐に入った一歩は、ついに必殺のデンプシーロールを放った。瞬間的に左を出して、一歩の強烈なパンチを回避するリカルド。そして、その直後、リカルドは、一方的にスパーを中止してしまった。
リングで鴨川に抱きかかえられた一歩は、ヨロヨロして意識がない状態だった。鴨川に小突かれて状況を理解した一歩は、一発もパンチを与えられなかったことから、うなだれる。だが、実は、リカルド本人はもちろん、セコンドのビルも、一歩の強烈なデンプシーロールにキモを冷やしていたのだった。
まもなく、鷹村に命じられて仲代ジムに行った一歩は、宮田が、伊達のスパーリングパートナーになっていたと知って―。

Round 6「追い続ける背中」

Round 6「追い続ける背中」

伊達とリカルドの記者会見が行われた翌日、一歩は、鷹村に誘われて早朝のロードワークに出た。そこで一歩らが見たのは、世界戦を2日後に控えた伊達の姿。鷹村は、自分なりに伊達を激励しようと、ロードワークの時間を合わせたのだ。一歩らを見つけた伊達は、その思いに気付き、一緒に走りながら素直に胸の内を明かしてくれた。
伊達のリカルドに対する思いは、単なるリベンジではなかった。伊達が負けて以来7年間も王座に君臨しているリカルド。伊達は、目標でいてくれたからこそボクサーを続けていられた、とリカルドに感謝した。そして、伊達は、伝説の王者ともいわれているリカルドを倒す攻略法はないとも明かした。世界戦には勝つための方法論や理屈はない、と言い出す鷹村。伊達は、その鷹村の意見を否定せず、やがて絶対の自信を口にして、朝もやの中に消えて行った。
世界戦当日、鷹村、青木らと一緒に会場の国技館に入った一歩は、ひとりで伊達の控え室に行ってみた。妻の愛子、息子の雄二に挨拶した一歩は、出て来た伊達を静かに見送る。そんな一歩を見つけた伊達は、“世界のてっぺんで待ってるぜ!”と告げ、ニヤリと笑ってみせた。一歩は、リングに伊達の後ろ姿を見送りながら、自分もその背中を追いかけよう、と心に誓った。
まもなく、リング上に伊達とリカルドが登場し、いよいよゴングが鳴った。伊達は、いきなり挨拶代わりの左で攻勢をかけて―。

Round 7「悪魔の降臨」

Round 7「悪魔の降臨」

WBA世界フェザー級タイトルマッチの第1ラウンド。まるで一歩ばりのファイタースタイルで突進した伊達には、気負いがなかった。一歩がさんざん手こずったリカルドの左を流す伊達は、押し気味に戦いを進める。そして、7年前のメキシコでの試合で、伊達がリカルドに倒された第2ラウンドがやって来た。
リカルドは、いきなり右の必殺パンチを放って伊達を威嚇した。昔を思い出し、反射的にロープ際に下がってしまう伊達。リカルドは、巧みに強打を避けようとする伊達にボディーブローを連打。伊達は、ガードが下がったリカルドの顔面を狙おうとするが、さらに強烈なボディーを食らってしまった。リカルドは、このパンチで伊達を仕留めたと思った。だが、伊達は、リカルドの予想に反して反撃し、壮烈な打ち合いになった。
第3ラウンド。伊達の強さに気付いたリカルドは、それまでの上品で技術的なスタイルを一変させ、暴力的とも思える野獣のようなパンチを放ち始めた。伊達は果敢に反撃するが、リカルドの強さに圧倒されっぱなし。一歩の隣りで観戦する鷹村は、伊達の強さを認めながらも、リカルドの強さがケタ違いだと言い切った。
試合は進み、第9ラウンド。一歩は、ボロボロになりながらも精神力だけで踏ん張る伊達に、起死回生の魔法のパンチがあることを知っていた。それは、コークスクリューブローで相手の心臓をピンポイントで打ち抜く、必殺のハートブレイクショットだ。
ゴングが鳴った後、伊達は、リカルドの強打に耐えながら、懸命にハートブレイクショットのチャンスをうかがった。やがて、リカルドが頭部のガードを固めた時、その心臓部分がガラ空きになったが―。

Round 8「魂の一撃」

Round 8「魂の一撃」

WBA世界フェザー級タイトルマッチの第9ラウンド。劣勢の伊達は、起死回生を狙い必殺のハートブレイクショットを放つが、王者・リカルドに肘でブロックされて失敗。さらに伊達の右拳は、肘に当たった衝撃で骨にヒビが入り、使用不能の状態になってしまった。これに気付いたリカルドは、威力のある左を避けながら、連打で伊達を追いつめる。アゴが砕けてマウスピースを飛ばした伊達の肉体は、あばら骨が何本か折れたこともあり、ほぼ戦闘不能の状態になっていた。
ゴングに救われた伊達は、セコンドの会長・仲代から、試合をストップするよう促された。これを見て試合の続行を求めたのは、なんとリングサイドにいた妻・ 愛子だった。悔いが残らないよう夫を完全燃焼させたい愛子は、極限の状況の下で、あえて落ちたマウスピースを渡し、激励したのだ。
この声でパワーを充電した伊達は、圧倒的な応援コールの中、10ラウンド目のリングに立った。左を中心に攻撃する伊達は、骨折した右でもパンチをくり出す。だが、強打を受けた伊達のアゴの骨折が拡大し、口からは血がしたたり落ちた。
そんな中、伊達は、リカルドの一瞬のスキを突き、骨折した右で再びハートブレイクショットを放った。誰もが伊達の大逆転勝利を予想した必殺のパンチ。だが、リカルドは、倒れなかった。伊達のハートブレイクショットは、右拳の骨折で威力が全くなかったのだ。
リカルドは、伊達に止めを刺すべく、猛打で攻撃を強めた。そして、その右を受けた伊達は、ついにリングに崩れ落ちた。それと同時に、レフリーが試合をストップし、伊達の世界への夢は、終わりを告げたのだった。

Round 9「受け継ぐ資格」

Round 9「受け継ぐ資格」

伊達から、日本の中軽量級のけん引役に指名された一歩。まだその自覚が全くない一歩の2度目の防衛戦の相手は、全日本の7位にランクされているハンマー・ナオという選手だった。ナオに関する資料はほとんどなかったが、一歩はコツコツと練習をこなす。ジムには、一歩を尊敬する国体準優勝の板垣も入門し、賑やかになった。
ナオの試合のビデオを見た一歩は、8戦8勝のナオの強烈なボディーフックに目を見張った。元々3階級も上のジュニアウェルター急でデビューしたナオは、一歩との対戦を熱望し、フェザー級に転向したとか。ナオは、打たれ続けて腫れ上がった凄みのある面構えをしていた。
だが、鴨川からナオの本名を聞いた一歩は、愕然となった。かつて一歩を先輩と慕い、ランニングの際にいつもゲロを吐いたことから、“ゲロ道”とのアダナを付けられた山田直道が、今回の対戦相手のハンマー・ナオだったのだ。不器用で内気ながら頑張り屋の直道は、両親の転勤でジムを辞めたのだが、引越し先の地方でボクシングを続けていたらしい。
ビデオから分析すると、ナオは打たせながら前進して相手にパンチを浴びせる選手。板垣は、一歩なら間違いなく相手を病院送りに出来る選手だと言い切る。だが、鷹村は、精神的に甘い一歩が鬼になり切れないのではないか、と告げた。
まもなく、ナオが都内で出稽古をしていると知った青木と木村は、そのジムに偵察に行った。ナオのボディーフックは強烈で、スパーリングパートナーを3連続でKOにするほど。青木らの顔を見たナオは、本気で一歩のベルトを狙うと宣言した。

Round 10「噛ませ犬」

Round 10「噛ませ犬」

いろいろなジムの若手ホープの噛ませ犬役を引き受けることで、ボロボロになりながらチャンスを掴み、這い上がって来たナオ。だが、相手が可愛い後輩だと知った一歩は、なかなか意気が上がらない。そんな様子を見た記者の飯沼は、ナオが一歩を目標に頑張って来たことを明かして奮起を促した。
鴨川会長の分析によると、不器用なファイタータイプのナオは、玉砕覚悟で接近戦を挑んでくる。これまでに、ごくまれに、噛ませ犬が逆に噛み付くケースもあるのだ。必殺のデンプシーロールは使えないが、鴨川は、全てにおいて分がある一歩に、チャンピオンとして真正面から受けて立つよう指示した。
計量で一歩の顔を見たナオは、握手を拒絶し、ベルトを奪い取る、と告げた。噛ませ犬の勝利予告に、取材に駆けつけた記者たちは、驚きの声を上げる。一歩は、ヤル気満々のナオに、本気で戦うことを誓った。
翌日、試合を前に、控え室のナオは、一歩が本気で戦ってくれると知り、嬉しさを噛みしめていた。一歩の後ろ姿を見失いたくないナオは、いつか対戦することを夢見てボクシングを続けてきた。ナオがボクサーとしての寿命が短い“打たれるボクシング”を選んだのは、ベストの状態のうちに憧れの一歩と戦うため。ナオは、この試合を自分の引退試合と考えていた。
先輩の一歩に最高の自分を見せる――。会長の八戸もあっけに取られるほどの気迫でリングに向かうナオ。地元から駆けつけてきた応援団の声をバックにリングに立ったナオは、チャンピオン・一歩の入場を待った。

©森川ジョージ/講談社・VAP・マッドハウス・NTV・D.N.ドリームパートナーズ