エミリーの時代
父であるダグラス・スターが亡くなったことで、エミリー・バード・スターはエリザベスおばさんに引きとられていきます。このときのエミリーの年齢は、10代前半。時代は、19世紀末頃だったと思われます。そして、やがて訪れたのは、世界の距離を一気に縮めた20世紀――。そう、ただでさえ感受性が強いエミリーが、人生のうちで最も多感な10代を過ごしたのは、19世紀末から20世紀初頭だったわけです。
このころ、世界の動きはどうだったのでしょうか?
エジソンが「映画」を発明したのが、1893年。ギリシャのアテネで、初めての国際オリンピック大会が開催されたのが、1896年でした。スウェーデンで「ノーベル賞」が制定されたのは1901年。ライト兄弟が飛行機を発明したのは、1903年です。この時代から100年あまりが経ちましたが、現代を生きるわれわれにもなじみ深い物事のいくつかは、エミリーの青春時代に始まっていたのです。
日本は、というと、1894年に日清戦争、1902年に日英同盟締結、1904年に日露戦争――といった具合に、激動の時期でした。元号でいえば、明治の後期です。日清戦争に勝利したことで紡績業を中心とする軽工業が発達し、さらに日露戦争に勝利したことで重工業が発展を遂げていきましたが、それは同時に、来る第一次世界大戦、第二次世界大戦へとつながっていく「日本帝国主義時代」の幕開けをも意味していました。
あらゆる分野で近代化が進む中、戦争が人々の生活に影を落とした時代。モンゴメリとその家族にとっても、それは例外ではありませんでした。モンゴメリは『エミリー』シリーズを発表する2年前に刊行された『アンの娘リラ』で、第一次世界大戦の時代を描いています。そこには、彼女自身の戦争への思いが綴られていると言って良いでしょう。
モンゴメリがそうであったように、エミリーもまた、作家を目指しながらも、さまざまな障壁に突き当たります。今では女性が作家になることは全く珍しくないですが、モンゴメリやエミリーが生きた時代には、まだまだ周囲の理解が不足していました。それでも「書きたい」と願い、「書かずにいられない」衝動に正直であり続けたモンゴメリは、時代を超えて愛され続ける作品群を残したのです。そんなモンゴメリが自らのイメージを投影したエミリーが、どんな日々を送っていくのか……。是非、物語を楽しんでご覧ください。
- スペシャル・トーク ACT.1
モンゴメリ、そしてエミリー - スペシャル・トーク ACT.2
プリンス・エドワード島へ - スペシャル・トーク ACT.3
映像化のポイント - エミリーのいるところ〜プリンス・エドワード島〜
- 原作者“ルーシー・モード・モンゴメリ”とエミリー
- ☆エミリーの時代