第4回「あまえ式 アニメシナリオの出来るまで」(2005.06.23)
文/上江洲誠

 さあ、いよいよ放送開始まで10日を切ったわけですが、スカパー!のアンテナのご用意はよろしいでしょうか?
 また、地上波での放送も決まったようです。嬉しい!
 詳しくは当公式サイトに記してあるはずなので、ご確認くださいませ。
 宇宙波と地上波で挟み撃ちだ!(何を?)
 さて、本日はアニメ『あまえないでよっ!!』を例に、アニメシナリオが完成するまでのお話をしようかと思います。
 企画の始まりは、いろいろありますが――今作の場合は、放送局と雑誌編集部の方で「和の心を尊ぶ、新しい萌えの提示。国際化社会に通用する若者の創造。ぶっちゃけコスチューム物」等々をテーマに、模索・検討して、企画書に判が押されます。
 フィルム制作の依頼を受けたアニメスタジオでは、スタッフの選定が始まります。
 ここでプロデューサーから、小生に電話がかかってきます。
「――混迷する現代を生きる人々の清涼剤になり、『生きる』ことに強い希望を感じることが出来るフィルムに! ぶっちゃけコスチューム物」
「わかりました!(キラキラッ)」
 と、いよいよ小生の仕事がスタートです!
 各社プロデューサー、原作者、監督……とシリーズ構成(今回は小生)が会しての打ち合わせが始まります。
 最初は、数時間に及ぶ名刺交換。「どうもどうも」「まあまあ」と高度な心理戦が展開されます。
 一触即発。パワーバランスが決まる重要な瞬間なので、気を抜けません。
 打ち合わせでは、フィルムが目指す方向性や、全体のストーリー展開等を話し合います。
 ようは「ナニ系」かをハッキリさせるのです。勝手に文学をやろうとしても了解してもらえませんし、学園コメディで、宇宙戦争を始めても了承してもらえません。
 また、ここで、見せパンツの割合や、乳首分のオンオフを決めます。
 特に重要な部分であり、議論にも熱が入る部分なので、殴り合いに発展することも……。
 窓の外に朝陽が昇るのを見て、我に返り、定時出社の方は愕然となります。
 ――さあ、いよいよシナリオ執筆です!
 原稿用紙を前に奇声を上げたり、裸になって踊ったりして、何かが降りてくることに期待します。シナリオライターにはシャーマンとしてのスキルが重要なのです。
 ……が、そうそう何かが降りてくることはないので、本棚をブチ倒したり、ドアを突き破ったりします。
 ……アパートの大家に怒られた所で、我に返って、監督に電話します。
 元永慶太郎監督は主にファミレスか、さくらやホビー館に生息しています。夜行性なので暗い時間につかまえます。
 ハンバーグなどを食べながら、アイディア交換をしたりします。
 交換とは名ばかりで、ほとんど監督からアイディアを貰います。やはり長いキャリアのある方なので、セオリーの蓄積に唸らされます。
 30分ほど打ち合わせをして、6時間ほどZ級映画の話をします。模型雑誌の発売日だったりすると更に盛り上がります。
 今作はお寺のお話なので、自己の宗教観を確立させておかないと、ぼんやりした内容になってしまいます。
 早速、瞑想の開始です。
 小生は普段、風呂に1時間ぐらい入るのですが、これを書いている間は毎日2〜3時間は風呂に入っていました。
 世界で最も雑念から解き放たれる場所は風呂です。
 風呂に原稿用紙を持ち込みます。濡れて使い物にならなくなりますが、思考することが大事なので、良しです(……結局PCで打ち直す)。
 たとえ湯を入れていなくても、バスタブの中に座っているだけで、トリップしまくりであり、母胎回帰です。
 どういうことか、家の風呂場には窓がなく……完全に世俗から隔離されるのです。設計ミスですが、小生には好都合でした。
 ……そのかわり、バスタブから出て現実に戻った時の喪失感はすさまじい物があり、仕事どころではなくなり、結果、深酒します。
 こんな感じでシナリオは書かれていくのですが……。
 そうこうしているうちに、いよいよ期日がなくなって来ます。
 激昂したプロデューサーが、ドアを叩いています。
 電話線を抜いたのに、受話器からは呪いの声が聞こえます。
「テ・ケリ・リ……テ・ケリ・リ……」
 ……うああ、やめろ!
 窓に、手が!
 かゆ……うま……【――以下次回】

<プロフィール>
フリーランスアニメ脚本家。若い衆だが会話内容は40代。歌舞伎町で職務質問される毎日。代表作は「ゆめりあ」。